高知の片隅でひっそりとJ-POPを語る

高知から音楽(J-POPメイン) やアニメなど、好きなものへの愛を語っていきます。

10-FEET「thread」 -今を精一杯生きろ-


「今を精一杯生きろ―。」
そんなメッセージが詰まった10-FEETの傑作。

・全体的な感想

約3年ぶりとなる10-FEETのフルアルバムとなる「thread」。
震災の影響もあったのか、メロディ・歌詞共に力強さを感じるものになっていました。

ますます研ぎ澄まされたメロコアサウンドはもちろんなんですが・・・
それをベースにパンク・ハードコア・レゲエなどの要素も上手く昇華している印象です。
よりストレートなメロディと相まってか、聴き手の心に真っ直ぐ届くんですよね。
TAKUMAとNAOKIによるボーカルの掛け合いも健在など、彼ららしさも維持されています。
それらも含めていつも以上に沁み渡る、10-FEETサウンドを感じることが出来ました。
特に、フォークソングのような切なさがある「淋しさに火をくべ」や「コハクノソラ」は秀逸。

そう感じるのは、歌詞に込められたメッセージも影響しているからなんでしょう。
今を一生懸命に生きようと奮闘する人々の背中を押してくれる・・・
力強くも優しさに満ちたメッセージが詰まっています。
いつかは終わりが来る人生、それでも後悔しないように日々を過ごせ。
このアルバムに収録されている楽曲の濃さからも、それが伝わって来ました。

・以下、全曲レビュー

1.JUNGLES
イントロのハードコアサウンドからスカを意識した歌メロへの展開が印象的。
ベースが刻む軽快なリフとガツンと攻めてくるギターが実に心地いいんですね。
TAKUMAの熱い歌唱とNAOKIのコーラスによる掛け合いも絶妙。
歌詞では「24時間しか残されていない状況で何をするか?」と問いかけています。
いかに一生懸命生きるかが大事だってことなんでしょうね。
英語詞でありながらも、震災の影響が表れた内容です。

2.focus
ゴリゴリしたギターサウンドのミクスチャーロック。
TAKUMAのラップと駆け抜けていくメロディは聞いていて爽快です。
アルバムのテーマとも上手くマッチしているのが見事。
サビで疾走する展開や二分という短さもたまらない。
どれだけ短い曲であろうとも、全力を注ぐ彼らの姿勢が表れていると感じました。

3.その向こうへ
寂しさや虚しさ、悲しみを越えて力強く進む意志が込められたロックナンバー。
人間、誰しも人生の終わりという瞬間を迎えるわけで。
悲しみに暮れていたとしても、着実に近づいているんですよね・・・
少しでもそれを乗り越えて前へ進んでいこう―。
切なさを感じさせるメロに乗せて「その向こうへ」と歌うTAKUMAの歌唱にグッと来ます。
所々でピアノを取り入れているのも、曲の優しさを感じさせる。

4.蜃気楼
少年時代の無垢な心を思い出しながらも、前へと進む・・・
そんな気持ちが描かれている曲です。
ストレートなギターサウンドが力強さを感じさせてくれます。
TAKUMAとNAOKIの掛け合いも相変わらず。

5.hammer ska
「この一瞬だけ どうか勇気を与えておくれ」と熱く想いを叫ぶハードナンバー。
少しの勇気だけでも困難に立ち向かって行ける・・・
彼らの強さをそのまま表現しているかのような曲です。
ラストの疾走するドラムのリズムがそれを増幅させる。

6.シガードッグ
歌い出しの歌詞にもある木漏れ日をイメージしたギターのイントロが印象的。
亡くなった友人の分まで生きると決意した歌詞が力強い。
優しいミディアム調のメロディと相まって心に沁み渡る1曲。

7.CRYBABY
心の中にある大切なもの・・・
「それは戻らないのですか?」と問いかける歌詞が印象的。
人によってどう解釈が様々になりそうなんですね。
簡単なことでも、ないがしろにするな—。
強いメッセージを感じられる1曲。
切なさを感じさせる歌メロも素晴らしい。

8.求め合う日々
過去の夢や想い出を越え、前へと進む決意が描かれています。
どんなに楽しかった時間でも、ずっとそのままではいけないんです。
少しずつではあるけど、変わっていかなければならない。
確実に進んでいこうというメッセージが伝わって来ました。
メロコアサウンドながらも、アコギの音色が味わい深い。

9.SKANKIN' CHOKE BANGER
ハードなギターリフが炸裂したロックナンバー。
途中でレゲエのメロを入れてきているのが面白いと言いますか。
サビでゴリゴリとうねるギターリフもカッコいい。
歌詞も全力で生きることの大切さを歌っています。

10.DAVE ROAD
DAVE ROADと叫ぶサビがとにかく熱いメロコアナンバー。
Foot! Toe! Tail!」を太っていると空耳で聞かせるのもコミカル。
10-FEETならではの遊び心に満ちていながらも、カッコよく仕上げているのが見事。

11.淋しさに火をくべ
疾走するメロとTAKUMAの激情的な歌唱が圧倒的な1曲。
ハーモニカの音色も相まってか、フォークソング的な哀愁も感じます。
特に、ラストの感情を込めた語りは圧巻。
変わっていく自分と過去の自分を重ねながら、前へと進む歌詞も印象的。

12.コハクノソラ
「thread」収録曲の中で最もポップであろう曲。
軽快なドラムのリズムがそう感じさせてくれるんですよね。
激情的なギターサウンドとTAKUMAの歌唱、ハーモニカの音色がどこか切ない。
バックのピアノも影響しているんでしょうか。

・まとめ

前作から三年の月日をかけ、完成された「thread」。
TAKUMAの想いがメロディ・歌詞へ反映された傑作です。
今までのアルバムの中でもメッセージ性が強いと言える1枚。
10-FEETが全力で送る、現代だからこそ聞いてほしいメッセージアルバム。
それでいて、「DAVE ROAD」のようなコミカル路線も挟むのが彼ららしい。
ノリの良さも彼らの魅力なんですけど、その辺が変わってなくて安心。

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