50%/Official髭男dism -50%の力でいい、でもここぞという時は本気で!
2024年も変わらず新境地を開拓し続けるヒゲダン。
10月の「Same Blue」で青春に対する解像度・表現力(キャッチーなメロディで青春の甘酸っぱさ、それに絡まるトリッキーなリズムで心の不安定さを表現しきった点)の高さに驚かされたばかりなんだけど、本日配信された「50%」がこれまた度肝を抜かれる仕上がりで。ライブ活動休止を経たヒゲダンだからこそのメッセージが刺さる、ストレスばかりの現代社会に生きる我々の背中を押してくれる1曲です。
・50%(映画「はたらく細胞」主題歌)
「ウォォォ~」のコーラスによるイントロで幕を開け、サビまではヒゲダンらしいグルーヴを聞かせてくれるミディアムナンバー。本当は[50]パーで生きたいのにいつの間にか[100]でないとって思い込んで生きている・・・ そんな現状に疑問を投げかける歌詞が心に刺さります。今の時代を生きる私たちに必要なメッセージがすごく印象的なんだけど、その後に入る2番のAメロでよりそれが活きてくるなと感じました。
恐らくヒゲダンの楽曲では初となるであろうラップを取り入れ、焦りや苛立ち・自己管理も出来ない自分への不甲斐なさなどまくしたてるように歌い上げているんですね。
今までにない早口の歌唱となっていて、心に潜む焦りがこれでもかと表現されているのが実に見事。心地よいグルーブに「よーいドン!」の掛け声と聞きやすさやキャッチーさも忘れてないことで馴染みやすさがあります。
その後は何事もなかったかのように自分を労うことの大切さを歌っているんだけど、焦りなどの感情を吐き出したからこそ後半のメッセージ性がすごく増していて。
日々を忙しなく生きていくよりは50%の定位置で自分のことを大切にしつつ、ここぞという時に全力の100%で!
何事も程ほどに、バランスが大事ってことなんでしょう。
こういうテーマって何度も歌われてきたと思うけど、ヒゲダンならではの言葉遊び(50%定位置が50パーセンテージに聞こえるように歌ったり、「ホルモン腸脳関係 ジャンク疲れの自律神経」で韻を踏むなど)があることで心に残る仕上がりとなりました。
映画「はたらく細胞」の主題歌として作品に寄り添うだけでなく、ファンを大切に想うヒゲダンの想いも真っ直ぐに伝わる良曲です。
満ちてゆく/藤井風 -時間と共に「満ちてゆく」もの-
昨年10月の「花」からおよそ5か月ぶりとなる藤井風さんの新曲「満ちていく」。
風さんの歌唱と優しいメロディ・グルーヴに心が満たされる、ピアノバラードです。
・満ちてゆく
ピアノの穏やかなメロディと風さんの優しい歌唱で聞かせる1番、バンドサウンドと打ち込みによるグルーヴ感を増していく2番以降の展開・・・ シンプルだけど引き込まれる作りになっているバラードナンバー。
サビの「満ちていく」を強調するかのような自由さに満ちた歌唱は実に伸びやかで、ピアノを弾き語りながら歌い上げる風さんの姿が目に浮かぶかのよう。
特に、ピアノのみで構成されたイントロは王道のJ-POPバラードを意識した雰囲気になっているのが見事。グルーヴ感と風さんらしい歌唱で単なるピアノバラードに終わっていない印象です。
また、歌詞も素敵なものとなっていて。
時間の経過と共に変わるものがあったり、いろんな物事もいつか終わりを迎えていく・・・ それらを乗り越えて受け入れることで人は成長していくと歌っているんですよね。曲名の「満ちていく」は心が満たされていくというより、心がより強くなるってことなんでしょうか。年齢を重ねて体が衰えても心の成長は続く、年を取ることに対して前向きなメッセージを込めているのが素晴らしい1曲だなと感じました。
LADY/米津玄師 -シンプルに恋がしたい-
春分の日となる3月21日、米津玄師さんの「LADY」が配信リリースされました。
少し前からインスタやTwitterの投稿で新曲が出そうな予感はしていましたが、思わぬリリースは嬉しいものですね。
今の季節にピッタリな、思わず恋をしたくなるような暖かさに満ちた良質のポップスが誕生しました。
・LADY(ジョージア新CMソング)
この恋が続こうと、または終わりを迎えたとしても日々は刻むー。
そんな営みを春らしいゆったりとしたメロディに載せて歌ったポップナンバー。
ホーンサウンドなどの華やかな音色とピアノの奏でるメロディラインがシンプルに心地よく、春の爽やかさを感じさせてくれます。
素直に恋をしてみたいという感情を歌った歌詞がそのような印象を抱かせてくれるのでしょうか。
それもあり、軽やかなリズムに乗っかる米津玄師さんの歌唱は恋をして前向きになった心を表現しているかのよう。
一方で二番からCメロにかけての展開では、恋をしていく中で起こる心の揺れ動きを表現しているのです。
同じメロディを維持しながらも、効果的に入ってくるグロッケンの音色やギターフレーズがこれから先に起こるかもしれない別れや相手に対する不信感の表れを描いていて。
歌詞ではそのことをシンプルに歌っているんだけど、サウンド面では緻密な表現をしていて実に見事です。
特に、Cメロの転調は曲の空気を変えるほど大胆。
それを表すかのように不安定になった心を歌い上げているんですよね。
本当は愛してほしいのに、思ってもない気持ちが出てきたり素直じゃない行動をしてみようとしたり・・・
米津さんらしい展開だなと感じると同時に、その凄さを改めて感じずにいられません。
ラストサビは「恋をしたい」自分の気持ちと素直に向き合い、それを感じさせる歌唱の変化も印象的。
力強く歌い上げることでシンプルに恋をしたい気持ちが聞き手にも伝わるのではないでしょうか。
心に起こる変化も受け入れた上でどこまでもストレート、真っ直ぐに恋したい気持ちを歌い上げた、米津さんなりの不器用さも出たラブソングです。
恥ずかしくってしょうがねえ/米津玄師 -あんたみたいな大人になるのは恥ずかしくってしょうがねえ-
11月23日に「KICK BACK」のシングルが発売されました。
米津玄師さんと言えばカップリング曲も魅力的なんだけど、今回の「恥ずかしくってしょうがねえ」は無責任な大人になりたくないという鋭いメッセージが込められた曲となっています。
アコースティックギターのノスタルジックなサウンド、ゆったりした心に染みるメロディと米津さんの味わい深い歌唱に引き込まれました。
・恥ずかしくってしょうがねえ
ノスタルジックなアコースティックギターの旋律が心に響くミディアムナンバー。
シンプルな音構成なんだけど、「恥ずかしくってしょがねえ」の直後に不協和音的な音の歪みを入れて聞き手を惹きつけるのが米津さんらしい仕上がり。
タイトルからして不器用な愛を歌い上げるものかと思いきや、今の世の中を鋭い言葉で批判するメッセージソングになっていることにビックリしました。
米津さんだからてっきり「この想いを伝えるのは恥ずかしくってしょうがねえ…」って内容になると思っていたんですよね(笑)
いい意味で予想を裏切られ、「言うだけ吐き捨てる無責任な大人になるなんて恥ずかしくってしょうがねえ」という鋭いメッセージソングとなっているのが見事。
米津さんのやさぐれ感に満ちた歌唱、世の中に対しての情けなさをぶちまけた言葉のチョイスが曲のメッセージ性をより確かなものにしています。
特に、UKロックぽさを感じさせるCメロの存在感は圧巻。
自分の吐いた言葉がそのまま帰ってくると歌った歌詞と合わせて心に刺さるというか。
今の時代だからこそ、自分を見直すべきと改めて感じさせられました。
KICK BACK/米津玄師 -幸せを願うだけでなく、時に努力も必要-
常に想像を超える楽曲で我々を圧倒させてくれる米津玄師さんですが。
チェンソーマンのOPに起用された新曲の「KICK BACK」は、まさにその言葉がピッタリ当てはまるなと。
イントロから鋭く刺さってくるベース音、荒々しく鳴り響くギターサウンド、がなるような米津さんの歌唱・・・
大胆な転調に常田さんのアレンジも加わって、ただただ圧倒されました。
・KICK BACK(アニメ「チェンソーマン」OP)
チェーンソー音の起動音と鋭さ全開のベースラインで始まるイントロ、Aメロからサビにおけるスリリングで疾走感たっぷりのメロディ、大胆な転調が圧巻のCメロ、「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」をシャウトしながら締めくくるアウトロ・・・
始まりから終わりまで、聞き手を圧倒し続ける怒涛の展開がたまらないロックナンバー。
メロディそのものは真っ直ぐなんだけど、常田さんのアレンジによって切れ味が半端ないものとなっています。
ギターサウンドの鋭さとノイズを混ぜた米津さんのボーカルは非常に荒々しく、いい意味でイカれた曲になってるんですよね。
それを象徴するのが大胆な転調を聞かせる二番のBメロでしょう。
攻撃的で荒々しいそれまでの展開とは打って変わり、讃美歌のような美しさを持っているのが圧倒的で。
「幸せになりたい」の歌い出しから心が洗われるかのようなんですよね。
一番のBメロと同じフレーズを違うメロディで聞かせる表現力、そこからシャウトで元の雰囲気に戻る流れも含めて圧巻の一言。
また、歌詞の持つメッセージも印象的。
恐らくタイアップ先のチェンソーマンを意識した内容になっていると思いますが、それを抜きにしてもしっかりと伝わってくるものでした。
人間ってのは心から幸せだったり楽しいことを求めるんですよね。
今がどんなに辛く虚しい日々だとしてもその先にいいことが待っているのでは・・・
そのメッセージを「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」という引用フレーズで強調しているのが見事。
幸せを願うばかりでは結局のところ、そうはならないのが現実ー。
だからこそ、時には努力も必要じゃないでしょうか。
米津さん
まとめ
ボカロP・ハチとして音楽キャリアをスタートさせ、圧倒的な存在感の楽曲を生み出し続ける米津さん。
そんな彼の今が明確に形となったのはもちろん、歌詞に説得力を持たせているのも本当に素晴らしい。
メロディ・サウンド・歌詞に込められたメッセージが鋭く心に突き刺さります。
2022年7月ベストソング10選
毎月のベストソング、7月より次点曲をなしにして10曲紹介していきたいと思います。
そっちの方が単純に紹介できる曲を増やせるかなと思いまして。
あと、しばらくの間はコメントなしでメモ代わり的な感じにしていきます。
ゲームをやる時間が増えたことで記事をじっくり書く時間が取れなくなりまして…
では、7月分です。
2022年7月ベストソング
・雨燦々/King Gnu
ヌー史上もっとも爽やかなメロディが存在感を感じさせるナンバー。
夏の通り雨が過ぎ去った後の晴れた空を表現しているのが見事で、芸術的な爽やかさと言いたいほど。
井口の歌唱も曲の情景に合っていて、表現力を増している印象。
曲の持つ美しさが圧倒的。
https://t.co/AsbyQkAfSJ
「おばけが出るぞ」というフレーズをキャッチーなメロディに載せて歌ったサビが印象的なポップナンバー。
軽やかなメロディとなっていて、思わず身を委ねたくなります。
子供向けと思わせつつ、星野源さんらしい良さも感じられる良曲。
https://t.co/N11mj5J3z6
・Free Free Free(feat.幾田りら)/東京スカパラダイスオーケストラ
伸びやかなホーンサウンド、駆け抜けていくメロディの疾走感がたまらないスカナンバー。
真っ直ぐな幾田りらの歌唱は聞いていてシンプルに心地よさを感じます。https://t.co/eG2JL5F75R
・夏の帰り道/kareru
ひぐらしが鳴く夏の夕暮れならではの切なさをピアノの美しいサウンドで表現したミディアムナンバー。
間奏の心に染み渡るギターソロやginkaの儚い歌声がその情景をより引き立ててくれます。
https://t.co/bwtUet8Qhu
・栄光の扉/平井大
壮大で力強いメロディ、夢に向かって頑張る者の背中を押してくれる歌詞が心に響くミディアムナンバー。
努力した時間だけでなく、思うように結果が出ずに涙した瞬間も糧になるー。
目標に向かう過程もしっかり肯定してくれるのが素晴らしい1曲。
ウクレレのサウンドを取り入れてハワイアンを意識した楽曲のイメージが強い彼ですが、こういうメッセージソングも聞かせてくれるのが見事です。
別の方向で夏を表現していると言うか。
https://t.co/OUKbEIFweu
・Baby's Alright/[Alexandros]
Baby's Alright - song and lyrics by [Alexandros] | Spotify
・左右盲/ヨルシカ
左右盲 - song and lyrics by Yorushika | Spotify
・空蝉/Omoinotake
空蝉 - song and lyrics by Omoinotake | Spotify
・雨宿り/Penthouse
雨がしとしと降る夜をイメージしたサウンドと落ち着いたメロディに引き込まれるミディアムナンバー。
Penthouseらしくジャズの雰囲気を取り入れていて、いい意味でJ-POPの枠にはまらない曲となりました。
男女ボーカルの掛け合いも印象的。
https://t.co/LzqQADZaSv
・tokyo(feat.鈴木真真海子,Skaai)/yonawo
tokyo (feat. 鈴木真海子, Skaai) - song and lyrics by yonawo, Skaai, Mamiko Suzuki | Spotify
雨燦々/King Gnu -悲しみを水に流して我々は生きていく-
雨上がりの青空が見せる輝きと夏の爽やかさ・・・
それをメロディとサウンドで表現した、ヌーの新境地とも言える1曲。
重厚なグルーヴも維持しながらなのが見事ですね。
・雨燦々
随所で鳴り響く美しいストリングスの音色と爽やかなメロディが今までのヌーにない雰囲気を感じさせるナンバー。
井口の歌唱から感じる繊細さとリズム隊による重厚なグルーヴを維持しつつ、爽やかさが加わったことで雨上がりの青空をイメージさせる楽曲になっている印象です。
楽曲構成もイントロ・1番Aメロ~サビ、2番・Cメロからラストサビと全体的にシンプルなんだけど、その中で虹がかかる雨上がりの青空が見せる輝きを表現したことで芸術的な美しさと爽やかさも含んでいるんですよね。
最初に聞いた時は「爽やかだな~」と思ったのですが、何回か聞くうちに「単に爽やかな曲と評するのは何か違う・・・」って違和感を持つようになりまして。
夏らしい雨上がりの青空を追求した爽やかなメロディ、ヌーらしいグルーヴの中に同居する美しさと繊細さはまさに芸術的だと言って過言ではないほど。
King Gnuというバンドの圧倒的な表現力に改めて引き込まれてしまいました。
サウンドやメロディだけでなく、歌詞の表現力もポイント。
土砂降りが多い最近の夏らしい情景を交えながら、激動の時代を生きる我々に対するメッセージを歌っています。
目まぐるしく情勢が変わるこの時代を生きていると心に悲しみや悩みを抱えてしまうと思うんですよね。
でも、どんなに悲しくても結局は生きていかないといけないわけで。
せめて悲しみを空から降る雨のように流してしまえれば・・・
いつまでも引きずらないで、雨上がりの青空のように晴れやかな心で生きることが今の時代は必要なんでしょうね。
芸術的でありながら爽やかさに振り切った「雨燦々」。だからこそのメッセージは説得力があります。
まとめ
重厚なグルーヴはそのままに、これでもかというほどに爽やかな楽曲に仕上がった「雨燦々」。
メロディとサウンドの爽やかさはもちろん、前向きになることの大切さに気付かせてくれる歌詞のメッセージは今の時代だからこそ必要ではないでしょうか。
ヌーの新境地とも言える楽曲と共に注目して聞いてほしいです。
雨燦々 - song by King Gnu | Spotify

