高知の片隅でひっそりとJ-POPを語る

高知から音楽(J-POPメイン) やアニメなど、好きなものへの愛を語っていきます。

宇多田ヒカル「Fantome」 -人間活動のその後-

前作「ULTRA BLUE」から8年ぶりのリリースとなった本作。

人間活動から戻って来たとあって、「生と死」をテーマにしています。
全体的に漂う暗さがこの作品に込められたメッセージを表現していると言っても過言じゃありません。

歌詞の重さ、楽曲から感じられる儚さや虚無感、それらを包み込むような優しさに満ちた歌唱…
全てが一体となってアルバムの世界観を作り上げています。

何より音のシンプルさによって、聞き手に伝わりやすくなっているように感じました。
歌詞に込めたメッセージ、作品の世界観を伝えたいからこそのシンプルさがかえって潔い。
最もアップテンポなポップナンバーの「道」もシンプルな打ち込みとその拘りようが伺えます。

余計なものを削ぎ落としているのは、宇多田ヒカルが今感じていることを表現するためとも言えるでしょう。
その結果、ストレートにメッセージが伝わってくアルバムとなりました。

シンプルだからこその良さが詰まった本作。
宇多田ヒカルの復帰作に相応しい一枚です。

Fantôme

Fantôme

「私の音楽遍歴 NO MUSIC NO LIFE」企画、開始します。

というわけで、ブログ企画第二弾となる「私の音楽遍歴 NO MUSIC NO LIFE」。
本日より参加者を募集します。

聞いていた音楽についての遍歴を時代別に語っていただくものとなっています。
どんな音楽(ジャンル、洋楽・邦楽など)が好きで聞いていたかを振り返る企画ってことですね。
なお、書き方は自由です。
私の場合は学生時代と社会人以降で項目を作りましたが、アレンジして頂いて構いません。
最後の「今後はどういった音楽を聞いていきたいか」だけは変えずにお願いします。
アーティスト名は詳しく書くと長くなるかと思うので、当時印象に残っていた、よく曲を聞いた方だけでOKです。

難しく考えずに参加していただければと思います。

なお、参加される方はこの記事にコメントするかツイッターへ返信してくださいね。


私の音楽遍歴 NO MUSIC NO LIFE

あまり深く書いたことがなかったのですが…
今回は私の音楽遍歴について語ってみようかなと思います。

時代別にまとめてみました。
では、どうぞ。

  • 1.小学校入学以前
ほとんど覚えてないけど、好きで聞いていたのはアンパンマンの主題歌集ですね。
主題歌以外にも所謂キャラソンが入っていたカセットを買ってもらって、ずっと聞いていた記憶があります。
キャラソン集だけに、各キャラの色が濃く出ていた曲が詰まっていたなと。

  • 2.小学校時代
この頃は母のカセットテープに入っていた、流行りの邦楽を聞く機会が多かったです。
どの曲も小学生なりに楽しんでいたように思いますが、特にスピッツの「ロビンソン」は深く印象に残ってます。
透明感のある歌声、爽やかなメロディ…
当時は何とも言えない儚さも感じていました。

そして、アニメ「ポケモン」が放送された頃には「めざせ! ポケモンマスター」のCDを買って聞きました。
何気に初めてお小遣いで買ったCDになります。

6年の時には宇多田ヒカルがデビュー。
圧倒的な歌唱力とセンスあるメロディに惹かれ、「First Love」をテープに録音して聞き倒していました。
初めて好きになったアーティストだったので、夢中になって聞いていた覚えがあります。

  • 3.中学時代
ヒットチャートを通じてミスチルスピッツ桑田佳祐さん(サザンオールスターズ)の曲を聞いてみようと思い始めた頃です。
世代的に敬遠してたのですが、実力あるアーティストも聞いておこうと思ったんですよね。

  • 4.高校時代
友人から教えてもらったアジカンをきっかけに、バンド系アーティストをよく聞いてました。
メロディの良さ、演奏のカッコよさ…
いろいろ聞く中でこれらを重視していくようになったと思います。
私が書いている音楽感想にもこれが表れてますね。

  • 4.高校卒業以降
時が経って社会人になると、アニメにハマった影響からかアニソンアーティストや声優の曲も聞くように。
戸松遥さんや豊崎愛生さんら4人組の声優ユニット・スフィアを始め、主題歌やソロデビューした声優の曲をよく聞いてました。
一時期、バンド系アーティストより聞いていたようにも思いますね。
普通のJ-POPからは少しずつ離れて行きました。

そんな中、アニメから離れた時期がありまして。
それと同時にアニソン、声優系アーティストの曲をほとんど聞かなくなりました。
職場の有線で最近のJ-POPを耳にしていたこともあり、そちらを聞く機会が多くなっていきます。
今は邦楽ロック系をメインとしつつも、気になった曲(ジャンル問わず)を聞くスタイルに。
たまに呟く楽曲感想もこの方針でやっています。

  • 5.今後はどういった音楽を聞いていきたいか
基本的に邦楽メインで聞いていくと思いますが、洋楽(特にUKロック、エレクトロニカインディーロックなど)も聞きたいですね。
前から興味はあるんですけど、何から手をつけていいかわからなくて…
少しずつ聞く幅を広げていきたいところ。

…以上で振り返りを終わります。
あまりまとまりがないかもしれませんが、読んでいただきありがとうございました。

星野源「恋」 -生活の中で生まれる恋や想い-

ブラックミュージックをポップスに昇華した、星野源らしいイエローミュージックの3曲。

・全曲レビュー


1.恋
二胡の音色がオリエンタルな雰囲気を感じさせるポップナンバー。
サビのリズムが非常に軽快で、聞いていると多幸感を感じずにいられない。
適度な疾走感も楽曲のポップさをより引き立てている印象。
ギターやストリングスのテンポがちょうどいい感じです。
生活から生まれる恋を描いている歌詞も印象的。
「YELLOW DANCER」の流れを汲みつつも、違った雰囲気に仕上げてきているのが見事。
敢えてブラックミュージックの要素を薄めて純粋なポップスとなっています。


2.Drinking Dance
自然と体を揺らしたくなるビートに心奪われるディスコチューン。
ジャズっぽさを感じさせるピアノの音色やゴスペルの雰囲気漂うコーラスが印象的。
ブラックミュージックの要素をポップに上手く昇華し、新たなダンスナンバーに仕上げています。
踊るくらいに楽しんでいこうというメッセージの歌詞も含め、聞いていて楽しくなってきます。
サビで思わず口ずさんでしまいたくなる、キャッチーな1曲。

3.Continues
コーラスの美しくも力強いハーモニーが印象的な1曲。
想いは繋いでいくと歌った歌詞のメッセージをしっかりと伝えるものになっています。
ゆったりとしたリズムもあってか、リラックスして聞きたい。

4.雨音(House ver.)
雨がしとしと降る様子を感じさせるアレンジに仕上がっています。
電子ピアノの音色やゆったりとしたリズムがそれを上手く表現しているかと。
リズムで遊ぶラストが宅録の自由さを感じられて微笑ましくなりました。

・まとめ

「YELLOW DANCER」の流れを汲んだ、星野源流ポップスが詰まった今回のシングル。
ブラックミュージックをポップスに落とし込んだ作風はそのままに、歌詞が生活感を感じられるものに。
メッセージ性もちょっぴり強くなったように感じましたね。
今の作風を維持しつつも、新たな一面も見られることに期待です。

恋 (初回限定盤)

恋 (初回限定盤)

Champagne「Me No Do Karate.」-立ち止まらずに進む-

新たな一歩を踏み出した[Champagne]時代の最高傑作。

・全体的な感想

UKロックに影響を受けたサウンドが魅力的な彼らの4thアルバム。
改名前のラストアルバムとなりますね。 
本作は打ち込みやジャズ、メロコアなどの要素も吸収した意欲的な一枚に仕上がっていました。
 
今までの[champange]にはなかったドラムのリズムやリフの雰囲気が印象的ですね。
「Ho!」の間奏で聞かせるヘヴィーなギターの掛け合いなど、とにかく攻めているのが伺えます。
打ち込みを取り入れた[champange]流デジタルロックナンバーの「Stimulator」、キレのいいギターと浮遊感を含んだギターリフとの掛け合いが心地いい「Kick&Spin」と新たなアプローチも目立っています。

また、サウンドに関してもよりポップで強靭さが増したと思います。
各楽器との掛け合いで聞かせたり、ドラムのリズムに軽快さが増していたり。
聞くことの楽しさにも重きを置いているのがポイント。
[champange]のスタイリッシュなロックがポップの良さも兼ね備えたことで進化を遂げています。

歌詞については、彼らの力強い想いが如実に表れています。
常に高みを目指す彼らならではの決意が感じられるフレーズに満ちていると感じました。
どんなに批判があっても、決して立ち止まるわけには行かない―。
サウンドの変化や歌詞の内容など、今の彼らの強さが表現された1枚と言えるでしょう。

・全曲レビュー


1.Rise
ピアノのアルペジオからバンドサウンドへの移行が印象的なロックナンバー。
力強くポップなドラムのリズムと小気味良く掻き鳴らされるギターサウンドが痛快。
ダンスミュージックの要素も取り入れているのが[champange]の曲にしては新鮮です。
タイトルは直訳すると「立ち上がれ」。歌詞も含め、アルバムの幕開けに相応しい1曲。

2.Stimulator  
打ち込みを大胆に取り入れた[champange]流のデジタルロック。
いつも以上にキレのいいギターサウンドと相まって、非常にカッコいい。
間奏における近未来的な雰囲気を感じさせる音使いも圧巻と言いますか。

3.Starrrrrrr  
GEROCKの炭酸音とバンドサウンドが織り成す、爽やかなギターロックナンバー。
彼らにとって新たな試みなんですけど、上手く昇華している印象を受けました。
掻き鳴らされるアコギと炭酸音のイントロから爽快感が半端ないんですね。
Aメロ~Bメロの穏やかな展開もサビの盛り上がりに寄与している感じ。
開放感たっぷりのサビは聞いているだけで気持ちがいい。

また、間奏の激情的なギターソロも圧巻。
シンプルながらも、しっかりと聞かせてくれる演奏がグッド。
「今を生き抜いていけ」というメッセージが込められた歌詞も印象的。
真っ直ぐな楽曲、サウンドも含めて前向きな1曲になっています。

4.Kick&Spin 
ギター同士の掛け合いが非常に爽快な1曲。
キレのいいギターサウンドとどこか浮遊したギターリフ・・・
まるで、タイトルの「蹴って回して」を音で表現しているかのようです。
サウンドにおける表現力の向上を感じずにはいられません。

5.涙がこぼれそう  
ギター、ベース、ドラムが織り成すバンドサウンドが美しいロックバラード。
彼らの楽曲の中で最も美メロとも言える仕上がりです。
それでいて、ギターを効かせているのが彼ららしいと言いますか。
演奏テクニックよりも、シンプルに音と歌で楽しませようとしているのが伺えました。
何より、驚いたのが完成度の高さなんですよ。
今まで以上に洗練された演奏とメロディが心に沁みてきます。
これぞ、[Champagne]流のロックバラードとでも言うべきか。

歌詞は面倒くさい性格の「僕」が「君」だけを笑わせようと奮闘する姿が描かれています。
表面だけ見れば恋愛ソングっぽく見えるんですけど、実はそうじゃないんです。
壮大な展開とのギャップもあって、妙にひねくれているんです。
それも含めて、聞き手を楽しませることに特化した1曲と言えますね。

6.Ho! 
ヘヴィーなギターサウンドが効いたロックナンバー。
ストレートに駆け抜けていく楽曲と間奏のギターの掛け合いがカッコいい。
歌詞やタイトルから遊び心を感じられるのも彼ららしい。
全ての楽曲に自信を持っているからこそ、こういった曲も出来るんだろうなぁ。

7.Forever Young
爽やかさを感じさせるシンプルなギターロック。
変則的なギターソロなど、複雑な展開がないのも印象的。
真っ直ぐに、[Champagne]流の王道ロックを展開しています。
どこか懐かしさを感じさせるギターサウンドも新鮮。
メロディと歌で聞き手を楽しませることに特化した1曲と言えるでしょう。
歌い出しにおける川上洋平の歌唱も伸びやかで引き込まれるものがあります。

8.Travel
ピアノとギターが織り成す、落ち着いた雰囲気のミドルチューン。
アコギがいいアクセントになっていて、じっくりと聞かせてくれます。
サビにおける洋平の熱唱も歌詞の壮大さを感じさせてくれる。

9.Wanna Get Out  
中華風なギターのイントロ~Aメロのラップと曲の世界へと引き込む構成が印象的。
以降はその雰囲気を全く感じさせないエモーショナルなサウンドなのもいい。
開放的なサビで歌い上げる洋平の歌唱も聞いているだけで爽快。
バックで掻き鳴らされるギターとドラムの掛け合いにも注目。

10.This Is Teenage  
タイトル通り、若さが表現されたロックナンバー。
サビ手前の小気味いいギターフレーズ、伸びやかなサビが印象的。
ピアノも曲の雰囲気作りに上手く貢献しているのが見事。
ラスト前で半音上がるサビやポップな勢いに満ちたアウトロは聞きどころですね。

11.Plus Altra
彼らの持ち味である美メロを活かした壮大なロックバラード。
力強いドラムと大サビのギターが生み出す壮大さは圧巻の一言。
これからの決意が描かれた歌詞も含め、前進を感じさせる1曲。

・まとめ

今作をもって新たな段階へと踏み出した[champange]。
まだまだ彼らはやってくれそう―。
そう確信せずにはいられない一枚です。

評価:★★★★★

Me No Do Karate.【通常盤】

Me No Do Karate.【通常盤】

ASIAN KUNG-FU GENERATION「Wonder Future」 -未来への希望-

王道ロックサウンドを全力で楽しめ。
アジカンの強みがここぞとばかりに発揮された7thアルバム。

・全体的な感想

「ランドマーク」から約2年8ヶ月ぶりとなったアジカンのニューアルバム「Wonder Future」。

タイトルは直訳すると驚きの未来になるわけですが・・・
そのタイトルが示す通りのメッセージ性に満ちたアルバムとなりました。
現実を歌いつつも、悲観せずに希望を感じさせる歌詞。
前作では3.11以降にゴッチが感じた想いを歌っていたんですけど。
本作はより現実的な物事をしっかりと見据えているんですね。
驚くことが待っている未来、その時が来るまで何が起こるかはわからないわけで。
素晴らしいものなのかもしれないし、不安に満ちた世の中になっているかもしれない。
時には不安で立ち止まることがあるかもしれませんけど、それでも進むしかないんです。
何が起こるのか分からないからこそ、全力で今を生きていこうじゃないか―。
この先、何が起こっても後悔しないために・・・
政治的に感じる歌詞が多いものの、ゴッチが本作で伝えたいのはこういうことではないでしょうか。
ツイッターにおけるゴッチの主張には賛同できない面も多々ありますが。
とは言え、「勝者と敗者」における「伽藍堂のプレイランド」の韻踏みなど、語感の良さは健在。
遊び心を入れつつ、聞き手に楽しさを感じさせる…
今のアジカンだからこその技じゃないでしょうか。

それをストレートに伝えるためか、サウンド面にも変化が表れています。
シンプルだけど、力強くてポップさを含んだギターロックの数々。
シンセやストリングスは排除され、アジカンの4人が鳴らす音のみで構成されています。
ギター、ベース、ドラムによる演奏の王道ギターロックとも言えるサウンド。
初期の作風を髣髴とさせながら、ここまでの過程で得たものもしっかり反映されているのが見事。
音の力強さといい、成長したアジカンだからこそ鳴らせるロックがここにはあります。

あと、今作は音の感じにも注目して聞いてほしい所。
Foo Fightersのスタジオでレコーディングされた関係か、音がしっかりしているんですね。
ギターサウンドの広がり、ベースの重厚さ、軽快だけど存在感のあるドラム。
それぞれの楽器の良さが改めて感じられる音作りがされているなと感じました。
今まで聞いたCDに限定すれば、一番好みの音なのかもしれません。

・全曲レビュー

1. Easter/復活祭 
不穏さを含んだハードなギターリフがカッコいいロックナンバー。
エイトビートを軸にしつつも、ポップさを排除したメロディとなっています。
力強いドラムとうねりを感じさせるベース、乾いたギター・・・
原点回帰したかのようにも捉えられるサウンドが見事です。
何事も全力で取り組めというメッセージといい、今のアジカンだからこそ鳴らせる音じゃないでしょうか。
3分ほどの短さやギターソロのみで訴えかける間奏など、シンプルな構成も印象的。

2. Little Lennon/小さなレノン
軽快だけど包み込むような轟音ギターサウンドのロックナンバー。
この突き抜け感がたまりません。
間奏のギターソロやブリッジのドラムロールも格好良く聞かせてくれます。
人に言われてもやりたいことをやり抜くといった決意が込められた歌詞も印象的。

3. Winner and Loser/勝者と敗者
ドラムのビートが心地いい8ビートのギターロック。
疾走感のあるギターサウンドがアジカンらしさを感じさせる。
間奏の盛り上がりを予感させるゴッチのシャウトもかつての荒っぽさを彷彿とさせます。
勝者と敗者について問いかける歌詞もいろいろと考えさせられますね。
周りが「あの人は勝者(敗者)」と言っても、本人にとってはまた別だと思うから。
そんなことを気にするのはバカバカしいってことでしょう。

4. Caterpillar/芋虫  
使い捨ての現代社会を歌ったロックナンバー。
力強いドラムとノイジーに鳴るギターサウンドが印象的。
穏やかな曲調でありながら攻撃的に聞かせてくれる。
鋭いメッセージ性が込められた歌詞の威力を増幅させています。

5. Eternal Sunshine/永遠の陽光
小気味いいギターリフが気持ちいいミディアムロックナンバー。
突き抜けた轟音ギターサウンドがアジカンらしい。
辛いことがあっても前へと進む者の背中を押してくれる歌詞も素晴らしい。
タイトル通り、光が優しく包み込んでくれる美メロの1曲。

6. Planet of the Apes/猿の惑星
荒々しさを全面に押し出したアジカンの真骨頂と言えるロックナンバー。
這い回るようなうねりのベース、攻撃的に掻き鳴らすギター、突っ走る勢いのドラム。
ノイジーなボーカルと相まって何とも言えない空気に満ちています。
終末世界を描いた歌詞にも注目。

7. Standard/スタンダード
疾走感を感じさせるイントロとメロディがアジカンらしいロックナンバー。
アルバム用に再録されたのか、より強靭なサウンドとなりました。
パワーコードのリフで展開するサウンドのエモーショナルさがとにかく格好いいんですね。
サビにおけるゴッチのシャウトや伸びやかなギターがたまらない。
個性を受け入れることの大切さを歌った歌詞も印象的。
その人のスタンダード=個性なんですよね。

8. Wonder Future/ワンダーフューチャー 
どんな未来が待っているか分からないけど先へ進む。
そんな力強さをベースラインとドラム、不安を浮遊感漂うギターサウンドで表現したミディアムナンバー。
ブリッジで少しだけスピードアップしてるように聞かせてるのがツボ。

9.Prisoner in a Frame/額の中の囚人  
強靭なドラムのイントロから引き込まれるロックナンバー。
ギターのエモーショナルさがいいですね。
現状に留まらず進み出す決意を歌った歌詞もバンドの決意に感じられます。

10. Signal on the Street/街頭のシグナル
ストレートなギターサウンドを楽しめるロックナンバー。
何と言っても、ドラムの演奏が圧巻。
伊地知さんのドラムがなければアジカンサウンドは成立しない・・・
それを改めて感じさせてくれる。
ラストの「クラップ クラップ クラップ」、「タップ タップ タップ」の繰り返しも聞いていて気持ちいい。

11. Opera Glasses/オペラグラス
ポップながらも、パワフルなギターに圧倒されるロックナンバー。
Cメロの跳ねたメロディラインがすごくいい感じなんですね。
目まぐるしく変わる展開にも注目して聞いてほしい所。

・ まとめ

邦楽ギターロックの代名詞とも呼ばれたアジカン
そんな彼らが原点回帰とも言えるロックアルバムを作り上げました。
後悔しないためにも全力で今を生きろ―。
サウンドやメッセージ性を含め、まさに王道ロックというべき名盤。

評価:★★★★★

Wonder Future(初回生産限定盤)(DVD付)

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スピッツ「小さな生き物」 -少しでもいいから力強く前へ-

少しずつ前へと進んでいく。
着実に歩を進める力強さを感じる、新たな名盤が誕生しました。

・全体的な感想

前作「とげまる」から約3年ぶりとなるスピッツのオリジナルアルバム「小さな生き物」。
相変わらずのスピッツ節が炸裂している点はいつもと変わりませんが。

それぞれの楽曲がとても活き活きしているんです。
飛び抜けて目立つ曲はないけど、しっかりと聞き手に主張してくる。
小さくても真っ直ぐ生きる生き物たちの力強さを感じる13曲が揃いました。

そんな作風の背景には2011年の震災が少なからず影響していると思います。
2011年の震災で何もかも失われていく現状・・・
その状況に受けたショックは計り知れないものではないでしょうか。
それでも、辛い状況を乗り越えて頑張っている人々がいるわけで。
マサムネなりに前へ進もうとする人々の力強さを表現したのが本作だと感じました。

また、曲順も絶妙。
決意を歌った「未来コオロギ」から始まり、「僕はきっと旅に出る」と決意を歌って終わる。
優しいメロディもあって、ただ単に希望だけを感じさせる作りになっています。
また、シンプルで力強くかつ繊細になった演奏にも注目して聴いてほしい。
少しでもいいから前へ進もう―。
そんなメッセージが込められた、スピッツの新たな名盤です。

・全曲レビュー

1.未来コオロギ
どこか希望を感じさせるギターリフが清々しい軽めのギターロック。
しっかりとうねるベースラインやドラムのビートが曲を支えている。
バックで鳴らされる澄み切ったピアノの音も曲に彩りを加えています。
決意を歌った歌詞も含め、前へに進もうとする力強さが印象的。
 
2.小さな生き物
優しいギターサウンドをバックに力強く生きると歌った、決意表明とも取れるポップナンバー。
自分たちを含め、地球上の生き物たちの強さが表現されている。
しっかりとした存在感のベースラインに注目して聞いてほしい。

3.りありてぃ
いかにもスピッツらしいロックナンバー。
へヴィにうねるギターとポップなメロディが何とも絶妙。
間奏のギターソロも圧巻なので、注目して聴いてほしい。
「りありてぃ」というタイトルらしく、現実に触れた歌詞もポイント。
鋭いギターサウンドに載せて歌われているためか、ガツンと来ます。
あと、タイトルをあえてひらがなにしているのが何ともシュール。
重いギターサウンドと相まって、インパクト大。

4.ランプ
アコギの優しい音色がランプのような温かさを感じさせるミドルチューン。
バックで鳴るオルガンやシンセなどの音も曲に彩りを添えている。
どこか懐かしい雰囲気のメロディラインも含め、心に沁み渡る1曲と言えます。
ランプの温かい光がそのまま楽曲となった、今の時代に聞くべき名曲。

5.オパビニア
タイトルのオパビニアとはカンブリア紀にいたとされる海中生物。
それを題材にして人と繋がることの大切さを歌った、ある意味でスピッツらしさ全開の1曲。
伸びやかなシンセとバンドサウンドによる開放感あるサビがたまりません。

6.さらさら
どこか切なさを含んだサウンドが印象的なギターロック。 
ギターアルペジオとコーラスの織り成すイントロ、サビまでの穏やかな展開・・・ 
マサムネの透明な歌声がその切なさをより増幅させている。 
切なさだけじゃなく、優しさも忘れていないのがスピッツらしい。 

何より、サビが非常に力強い。 
ゆったりとしたビートを刻みつつも、手数の多さで力強さを感じさせるドラムや前向きなフレーズ。 
震災以降のシングルだけあって、その影響も感じずにいられない。 
改めて先へと進もうとするバンドの決意に満ちていると言えます。 

個人的な聞き所としてはCメロとラストのサビです。 
ヘヴィーにうねるギターリフがたまらないCメロと疾走感を増すラストのサビ・・・ 
特に、ラストのサビでは少しずつ手数を増やしていくドラムの技巧さが光る。 
テンポが上がっているわけでもないのに、そう感じさせるのはベテランの成せる業か。 

7.野生のポルカ
ティンホイッスルの音色が哀愁を感じさせるアイリッシュパンク。
民族音楽のテイストを感じさせながらも、直球ナンバーに仕上げている。
何と言っても、曲を聞いているだけで気持ちいい。
馬が駆け抜ける様を音楽で表現しているのが見事。
ラストにあるフラワーカンパニーズとの大合唱も含め、野性味溢れる仕上がり。
爽やかでありながらしっかりと野生も感じさせてきた・・・
改めてスピッツの凄さを感じます。

8.scat
タイトル通り、スキャットのみで構成されているロックナンバー。
勢いのあるギターリフ、ヘヴィーなベースライン、力強いドラムビート・・・
歌がない分、演奏にこだわりを感じさせる。
スキャットの生み出す浮遊感が何とも言えない異質さを生み出している点もポイント。
地味に聞き手を引き込む力があって侮れない。

9.エンドロールには早すぎる
80年代の空気を感じさせるディスコナンバー。
打ち込みサウンドとギターの生み出すリズムが実に心地いい。
失恋ソングなんですけど、ポップに聞かせる辺りがスピッツらしさを感じさせる。
ラストのフレーズも含め、ひねくれ感の半端ないポップミュージックです。

10.遠吠えシャッフル
シャッフルのリズムを取り入れたロックナンバー。
ギターの奏でるリズムが心地いい仕上がりです。
現実を揶揄したと思われる歌詞にも注目してほしいところ。

11.スワン
どこまでも澄み渡るようなアコギの美メロが印象的なバラード。
シンセも加わったサビは実に圧巻。
星空に亡くなった君が光として浮かんできた情景を描いた歌詞ともマッチしています。

12.潮騒ちゃん
リフレインされる「潮騒ちゃん」のフレーズが言葉遊びを感じさせるコミカルナンバー。
サビでさりげなく入れる中華風のギターリフに遊び心があって面白い。
カッコ良さを押し出した間奏のギターソロにも注目です。

13.僕はきっと旅に出る
ピアノのポップな音色とマサムネの歌声が聞く者を包み込んでくれるポップナンバー。 
全体的にポップな仕上がりなんですけど、力強いギターリフとドラムも印象的。 
どこかロックテイストを感じさせるのもスピッツならではだと思います。 
旅に出ようとする決意を歌った歌詞がバンドの決意を感じさせる。
まだまだやりたいことがあるからこその終わり方がスピッツらしい。

・まとめ

力強くも繊細なサウンドが印象的な本作。
歩みは小さくとも、一歩ずつ確実に進んでいけばいい―。
そんなマサムネの想いが伝わってくる名盤です。
ひねくれた中にも真っ直ぐなメッセージを感じずにはいられません。
スピッツらしい歌詞やサウンド表現で背中を押してくれる、ポジティブなロックアルバム。
優しいメロディの本作、ぜひとも多くの方に聞いていただきたい。
殺伐とした時代だからこそ、必要な1枚ではないでしょうか。

評価:★★★★★

小さな生き物

小さな生き物