ジャズのグルーヴを感じさせるスリリングなナンバー「ミックスナッツ」を軸に、表情やメッセージの異なる楽曲が楽しめる今回のEP。
ヒゲダンの今をしっかりと伝えてくれるものでした。
1.ミックスナッツ(アニメ「SPY×FAMILY」OPテーマ)
ジャズのグルーヴを感じさせるピアノやベースラインに引き込まれるイントロ、スリリングなメロディがカッコいいポップナンバー。
Bメロまでの程よい緊張感からキャッチーさ全開のサビに移行する瞬間は圧倒的な存在感に満ちています。
演奏テクニックとグルーヴ感を押し出したAメロ~Bメロを経てのサビが解放感に満ちていて本当に素晴らしい。
緊張感と馴染みやすさのバランスが絶妙なさじ加減となっていて、複雑でもあるし分かりやすくもある曲なんですよね。
歌詞はナッツ類(木の実)に混じるピーナッツ(落花生)がナッツ類のフリをしながら生きていく姿を描いています。
アーニャが大好きなピーナッツを題材にしながらも、多数派の中で擬態して生きている少数派の人々の葛藤や覚悟も描いているのが見事と言うべきか。
多数派になりきれなくて不安を感じたり、あるいはミスしたり、成り行きに任せたり・・・
多くの人が共感できるような歌詞が多い中で、少数派の人々に寄り添ったメッセージを伝えているのが個人的にいいものだなと。
2.Anarchy
無機質感の漂う打ち込みサウンドによるグルーヴが印象的なポップナンバー。
全体的に感じる軽やかなリズムは心地よさを感じさせるんだけど、クールさも同居させたことで心に渦巻く感情をしっかり伝えてくれるものとなっています。
混沌とした雰囲気のAメロ~Bメロ、そこから開放的なメロディのサビに入る構成も素晴らしいと言うか。
不満だらけの現状から抜け出したい気持ちが歌われているんですが、それを歌詞だけでなく曲でも表現しているのが見事なんですよね。
二番目のサビ~間奏~ラストサビの流れも個人的に圧巻で。
鬱屈とした感情が爆発しそうなヒリヒリ感に満ちた演奏を聞かせる間奏、それを経て爽快感が増したラストサビはこの曲一番の聞き所ではないかなと。
優等生イメージの強いヒゲダンが打ち出した新境地、改めて感じました。
3.Choral A
シンプルなリズムとJ-POPらしい良質のメロディが印象的なポップナンバー。
グルーヴ感を押し出した表題曲と違い、馴染みやすいシンプルさを感じさせるメロディを強調した仕上がりになっています。
イントロなどで鳴り響くパーカッションの音色、随所に入る伸びやかなホーンサウンドのおかげで色鮮やかなイメージになっているんですよね。
サビの王道を意識したメロディラインが特に秀逸で、「ヒゲダンが王道ポップスを作るとしたらこんな感じなのでは?」という理想をしっかりと実現している印象。
その分グルーヴ感は抑えめで物足りなさを感じるものの、いい意味でそう思わせてくれるのがヒゲダンだなぁと。
4.破顔
落ち着いたバーで流れていそうなR&Bをイメージしたミディアムナンバー。
思わず身を委ねて聞きたくなるほどのゆったりとしたリズム、夜のしっとりムードを感じさせる甘いピアノの音色・・・
何と言いますか、すごくムーディなんですよね。
それでいてサビを含めて落ち着いたグルーヴとなっているあたり、しっかりとヒゲダンの曲として完成している点もポイント。
夕暮れ時の街を舞台にしたストーリーで日常の些細な出来事に対する感謝を歌った歌詞も印象的。
「街の誰そ彼の人生の 無数の美しさに途方に暮れる」というフレーズは黄昏時とかけて人生模様を表現しているのが見事。
まとめ
2022年上半期のヒゲダンをギュッと凝縮した4曲を堪能できました。
表題曲の「ミックスナッツ」にかけて、様々なメッセージ・タイプの違う楽曲で魅力を伝えてくれたのが良かったですね。
EPでありながら、コンセプトがしっかりした密度の濃い1枚と言えるでしょう。
これからの活動も楽しみでなりません。