米津玄師「Pale Blue」 -本当はあなたといたかったのに-
切ない恋心を歌った「Pale Blue」、眠りにつく瞬間だけでも平穏な気持ちでいようと願う「ゆめうつつ」、奇妙な世界観が炸裂した「死神」。
3曲とも、米津玄師さんの才能を感じられる仕上がりとなった。
1.Pale Blue(TBS系金曜ドラマ「リコカツ」主題歌)
別れを決めたけど本当はあなたと未来を見たかった・・・
表題曲となる「Pale Blue」は打ち込みによるゆったりとしたリズムとピアノとシンセの儚くも美しいサウンドが心に迫るラブソングとなった。
「ずっと・・・」という歌い出しから想いの強さを感じられるのはもちろん、儚げな米津さんの歌唱が真っ直ぐに響いてくる。
美しさと無機質さの同居したサウンドとメロディ、ゆったりとしたテンポは曲の持つ儚さを増幅させているのが見事。
特に、サビに入った瞬間の盛り上がりは聞き所。
厳かに鳴らされるドラムと力強くも繊細なストリングスの音色、低音の規則的なグルーヴで歌詞に描かれた「やっぱりあなたと未来を見たかった」という後悔の念を明確に表現しているのだ。
その人に恋する気持ちだけでなく、別れを決めたことに対する後悔の気持ちも含めて素直に描いたことでサビの感情豊かな歌唱がより引き立つ。
ストレートなラブソングだけあって音数の少ない構成になっているものの、米津さんらしいセンスは相変わらず健在。
それを強く感じさせてくれるのがCメロからラストにかけての転調だろう。
いきなりワルツ調に変わるため、圧倒的な存在感を感じずにいられない。
軽やかさと優雅さが漂うメロディなのに、「行かないで、ここにいて」や「抱きしめて」と切なく歌うことで重さも加わっていることに脱帽。
徹底してストレートな感情を描くことにこだわったのが伺える。
2.ゆめうつつ(日本テレビ系「news zero」 テーマ曲)
夜も深まって来たし、そろそろ寝るようにしよう・・・
2曲目の「ゆめうつつ」は、そんな時間帯に彩りを加えてくれるようなゆったりしたメロディとシンセの浮遊するサウンドが心地よさを感じさせるポップナンバーとなっている。
J-R&Bを意識したトラックのリズム、ベースラインのうねりと未来的な音色のシンセは聞く者を少しずつ眠りへと誘うかのような心地よさに満ちていて身を委ねたくなる仕上がり。
美しくもふわふわ漂うメロディを聞いていると、まるでゆめうつつな気分にさせられるのだ。
コロナ禍で大変な世の中でも続く日々、せめて寝る時だけでも安らかな気持ちでいてほしいと願う歌詞も印象的。
3.死神
乾いたギターのイントロ、やさぐれ感漂う歌詞から尖った印象を受けるナンバー。
スタイリッシュさを感じさせる曲調とサビの語感を意識した歌詞のリズムが何とも言えない中毒性を生み出している。
米津さんらしい音や声の使い方、「アジャラカモクレン」などの奇妙な言葉も相まって一度聞けば頭から離れない曲となった。
3分という短さも曲のインパクトに一役買っている。
・まとめ
アルバム「STRAY SEEP」を経て発表された今回の3曲。
どれも彼らしいセンスを感じさせながら、しっかりJ-POPとして聞かせている印象を受けた。
Cメロからラストに向けて大胆な転調を入れて攻めたバラードの「Pale Blue」、「ゆめうつつ」から感じる寝る前の空気感、音や声をSE使いとして効果的に使っているのが米津さんらしい「死神」。
分かってはいたけど、相変わらず心を奪われてしまうのだ。
今後もどんな世界を見せてくれるのか、楽しみにしたい。