くるり「THE PIER」 -音楽で表現した「旅」-
自身が見た世界。
それをポップミュージックで表現した良作。
・全体的な感想
アルバムをリリースする度に作風が変わることで有名なくるり。
彼らの11作目となるアルバム「THE PIER」は異国情緒を感じさせる仕上がりです。
ヨーロッパの民族音楽や歌謡曲に日本の祭囃子、はたまた中東の要素など・・・
それらを取り入れ、音楽で世界一周旅行を表現したスケール感があります。
曲ごとに情景が浮かんでくるのが見事なんですよね。
聞いていると世界を旅しているかのような感覚を味わえます。
それでいて、ポップミュージックの良さも同居させている。
「音を楽しむ」=音楽であることを改めて再確認出来ました。
自由に表現を続けるくるりらしさが発揮された良作です。
・全曲レビュー
1.2034
旅の幕開けを告げるかのようなインスト。
ピアノの美しい音色、重みのある打ち込みサウンドが程よい緊張感に満ちています。
出発する前のワクワクと同居する不安さを表現しているのが見事ですね。
2.日本海
日本海の荒波を力強く表現したくるり流の歌謡ロック。
うねるベース、シンセやトランペットの音色が雰囲気を感じさせます。
「なう」だけで構成されたサビがどことなく哀愁に満ちている。
ロシア音楽のフレーズもこっそり入れているのが何とも。
3.浜辺にて
アラビア感漂うギターフレーズが印象的なロックナンバー。
リズムの良さを重視したベースラインに聞き入ってしまいます。
岸田繁の歌唱も聞き所ですね。
4.ロックンロール・ハネムーン
昭和の香りと現代のポップミュージックを融合させた1曲。
駆け抜けるドラムビートが心地良く、多幸感に満ちています。
5.Liberty&Gravity
お祭りのリズム・アラビア民謡の要素やラップを取り入れた、本作を象徴するナンバー。
目まぐるしく変わっていく曲調が自由な彼らの音楽性を表現しているかのよう。
ごちゃごちゃしているけど、全体的にポップの良さを押し出していて好きですね。
6.しゃぼんがぼんぼん
ハードなギターサウンドで攻めるロックナンバー。
「しゃぼんがぼんぼん」というサビの語感の良さが印象的。
あっという間に駆け抜ける楽曲も聞いていて爽快ですね。
7.loveless
王道的なUKロックの雰囲気を感じさせるロックナンバー。
壮大さを感じさせるギターサウンド、力強いドラムが印象的。
シンプルに楽曲の良さを感じさせる仕上がりです。
8.Remember me
アコギの美しいメロディラインが光るバラードナンバー。
楽曲を彩るトランペットやストリングスの音色、楽器を活かす美しいメロディ・・・
シンプルな構成だけど、心の奥底に入って来ます。
9.遥かなるリスボン
ポルトガル民謡を髣髴とさせるナンバー。
アコーディオンとアコギの音色がヨーロピアンな仕上がり。
楽曲を支える心地いいベースラインにも身を委ねたくなってしまう。
岸田繁の深みある歌唱と相まって、曲の世界に引き込まれてしまいます。
個人的に聞いていると旅をしたくなってくる、そんな1曲。
10.Brose&Butter
異国チックなアコギのメロディラインと打ち込みサウンドが心地いい。
語感の良さも含め、不思議なポップ感が生まれています。
歌詞から漂うティータイム感も印象的。
11.Amamoyo
小気味良く刻まれるギターリフが印象的。
ベースラインと相まって、心地いいポップミュージックになっています。
12.最後のメリークリスマス
鈴やアコーディオンの音色がクリスマスの雰囲気を演出するポップミュージック。
歌詞で別れを歌いくるりらしさを感じさせつつも、華やかなサウンドに仕上がっています。
ラストで讃美歌のコーラスを入れているのも印象的。
どこか切ないけど、聞いているだけで温かくなれそうな1曲。
13.メェメェ
ヤギの鳴き声をサウンドの一要素として取り入れたインスト。
どこか不思議な感じに仕上がっているのが本作らしい。
14.There is (always light)
軽やかなギターサウンドを活かしたポップナンバー。
温かみの感じられるメロディが心に沁み渡ります。
サビにおける英語詞が異国っぽさを演出する本作ならではか。
前向きな歌詞のメッセージにも注目してほしい。
・まとめ
ロックはもちろん、他国の民謡や歌謡曲など・・・
いろんな音楽的要素を取り入れた本作。
自由な発想でくるり流の世界一周旅行を表現した一枚です。
彼らの広い音楽性を実感できる良作。