聞いていると異世界に引き込まれていくような感覚がたまらない。
・全体的な感想
トクマルシューゴの4枚目となるアルバム。
本作は聞く者を異世界へと引き込んでくれるサウンドが印象的な仕上がり。
トクマルシューゴというポップの魔術師が繰り広げる、37分間のショーとでも言うべきか。
その理由は、聞く者をどこか違う世界へと連れ去ってくれるようなサウンドにあるのではないかと思います。
日常的な朝の風景が浮かんでくるものや、異国の情緒を感じさせてくれるもの、子供の頃に感じたような懐かしさを思い出させてくれるものまで、それらがいい具合で混ざり合っているんですよね。
聞いていると、すごく不思議な気持ちになるんです。
まるで、このアルバムを聞いている37分間は異世界に引き込まれていくかのようで。
見えている風景は日常なのに、トクマルシューゴが作り出した「ポート・エントロピー」という世界を体験できるのです。
聞き終わったあとに訪れる、何ともいえない満足感もたまりません。
とにかく心が満たされます。温かさを含んだ作風ってのも影響しているのかも。
それにしても、楽器のみならず非楽器までも操るのは相変わらずだなと。
特に「Orange」のアウトロは電話の音までも音楽に溶け込ませてしまってるんだけど、BGMとしてではなく一つの楽器としてしっかり存在させているのが見事。
ここが彼の凄い所でして。
おもちゃのオルガンなど、普通は使わないだろってものまで音にしているのです。
トクマルシューゴがポップの魔術師たる所以を感じることが出来ました。
・以下、特にお気に入りの曲をレビュー
2. Tracking Elevator
アコギのリフが心地いいポップミュージック。
曲のリズム感がいい感じですね。
「まだ止まらない Tracking Elevator カッチカッチ鳴らす ウインカーが鳴らす」って箇所の語感は個人的に好きだったり。
4.Lahaha
サビの「Lahaha~」のリフレインが頭から離れません。
特に意味のない言葉の繰り返しなんですが、聞いていて心地いいというか。
後半でテンポアップしているのも面白いですね。
あと、アコギをメインにした優しいサウンドもアクセントになってるなと。
その他、様々な楽器が奏でるアンサンブルも聴きどころ。
5. Rum Hee
聞いていると爽やかな朝の風景が浮かんでくる、そんなイントロが印象的。
サウンドもアコギをメインとした生音中心の優しいもので心が安らいできます。
サビの「ラムヒー♪」の繰り返しが印象的で、この荒んだ時代にこそ聞くべき曲です。聞いているだけで幸せになれるって曲もなかなかないんじゃないかと思いますよ。
・まとめ
数々の楽器を操りながら作り出したトクマルシューゴの音世界が構築されたアルバムの完成形、それが「ポート・エントロピー」という作品であると思います。
聞き手が連れていかれた異世界こそ、彼の作り上げた音世界であると言えるでしょう。