高知の片隅でひっそりとJ-POPを語る

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スピッツ「おるたな」 -スピッツのおるたな精神-

・全体的な感想

「とげまる」から約1年三か月ぶりとなる「おるたな」は彼らにとって三枚目となるアルバム未収録音源集。
2004年の「スターゲイザー」から「君は太陽」までのカップリング曲や2002年以降のカバー音源を中心に収録されています。
完全新曲はないものの、普段のスピッツとは違う魅力を感じることが出来る作品に仕上がっていました。

まず、カップリング曲の完成度が高いんです。
A面曲は限りなくキャッチーな楽曲で攻めてきている印象ですが、B面曲では少しひねくれている感じが出ていて面白味があります。
それでいて、スピッツらしいポップセンスを含んでいるのが見事。改めて聞いてみると名曲の多さに驚くばかり。
ギターのキレやバンドアンサンブル、曲の爽快感はA面曲以上かもしれません。
曲名が取っつき難い(というよりも抽象的?)のに、本気を感じられる曲になっているのがスピッツらしい。

また、カバー曲も素晴らしい。
どの曲も原曲の良さを保ちつつ、スピッツらしさも同時に表現しています。
マサムネの透明感溢れる声と彼らの見事なバンドアンサンブルによって、新たな命が吹き込まれているかのように感じました。
大きくアレンジを施していない(「14番目の月」は除く)んですけど、スピッツらしさが出ている点からも手を抜かずにやるというバンドの姿勢が現れています。
彼らのオリジナル曲にも引けを取らない、表現力と演奏を堪能できる珠玉のカバーと言えるでしょう。

 

・全曲レビュー

1.リコリス
アコギの爽やかな旋律とエレキギターの力強いリフが印象的。
後半に向けて駆けていくかのような曲の展開が好きですね。
マサムネの優しい歌唱から感じる切なさと疾走感のギャップがたまらない1曲。
シンプルなメロディラインでありながら、飽きさせないのもグッド。
聞けば聞くほど味が出てきます。

 

2.さすらい
奥田民生さんのカバー。
原曲と雰囲気が同じなのに、マサムネが歌うだけでスピッツの曲として成立している。
アレンジもシンプルにしている点が彼ららしく、声の力を感じられる仕上がり。

3.ラクガキ王国
ハードなギターリフが炸裂したスピッツ流のロックンロール。
初期の楽曲に近い雰囲気を感じられ、バンドとしての勢いに満ちています。
ギターの小技を効かせたり、うねりまくるリフがカッコいい。
これぞ、A面曲では見られないスピッツの真骨頂。

 

4.14番目の月
ユーミンのカバー。
収録楽曲の中で最もハードなアレンジが施されているのが印象的です。
ピアノやアコギを取り入れるなど、音で優しさも感じさせるのがスピッツらしい。
サビを力強くしている展開もまたグッド!

 

5.三日月ロック その3
突き抜けたギターリフが爽快感を感じさせるギターロックナンバー。
適度なスピード感とマサムネのボーカルがいい味を出しているんですよね。
サビにおける切れ味のいいギターリフは必聴。
個人的にはすごく好きな音です。

 

6.タイム・トラベル
原田真二さんのカバー。
キラキラしたピアノサウンドと優しいバンドサウンドが曲の良さを最大に引き出しています。
都会的でありながら懐かしい雰囲気を感じさせるのも、スピッツの成せる技でしょう。

 

7.夕焼け
夕暮れ時の切なさが曲に表れた1曲。
アコギを主体とした美しいメロディが素晴らしく、風景が浮かんできます。
「君のそばにいたい 想っていたい」と歌い上げるマサムネの歌唱も圧巻。

 

8.まもるさん
小気味いいギターリフとドラムのリズムが印象的なロックナンバー。
Aメロ~Bメロまでのディスコ調からサビで少し加速するかのような流れへと転調する時の爽快感がいい感じ。
キーボードのアクセント的な音使いも適度な浮遊感を演出しています。

 

9.初恋に捧ぐ
初恋の嵐というバンドのカバーですね。
原曲は聞いたことがないんですが、爽やかさを感じさせるアレンジが印象的。
初恋の苦い思い出を描いた歌詞とのギャップが上手く作用している点もポイント。

 

10.テクテク
イントロから始まるマサムネのアカペラが圧巻。
その後のハワイアンミュージック的なアレンジも素晴らしく、この作品におけるヒーリングミュージックとしての役割を果たしています。シャンベやアコーディオンの音もいいアクセントになっており、とにかく癒される曲。

 

11.シャララ
フリューゲルホルンのコミカルな音使いがアクセントになっているポップナンバー。
ギターの開放的なリフと「シャラララ…」のみのサビと相まって、とにかく陽気な曲。
「明るい明日を信じて さっそうと駆け抜けていく」といった前向きな歌詞もいいですね。
ただ元気になってほしい、そんなスピッツの想いが感じられました。

 

12.12月の雨の日
はっぴいえんどのカバー。
マサムネの無感情な歌唱がどことなく重苦しさを感じさせてくれます。
雨の日の鬱屈さを表現しているかのようですけど、12月とタイトルにある曲でやるのがひねくれているスピッツらしい。
フォーク調のアレンジも個人的に新鮮。

 

13.さよなら大好きな人
花*花のカバー。
原曲キーが高かったように思うんですが、さらりと歌いこなせるのが見事。
マサムネのハイトーンボイスが活かされています。
間奏でギターの音を高くしている箇所が個人的に好き。

 

14.オケラ
不穏なギターリフと反響するマサムネのボーカルが印象的。
ラストに混沌としたメロディの楽曲で締めるのが「おるたな」に相応しい。
ドラムも荒々しい感じが好き。
歌詞も「もっと自由になって蛾になってオケラになって」とリズム感が心地いい。

 

・まとめ

今回の「おるたな」。

タイトルが示す通り、既存の形に捉われないで曲を作るスピッツの姿勢がそのまま表れたものと言えるでしょう。
カップリング曲とカバー曲によって構成されたアルバムでありながら、一つの作品として完成している。思わず納得。

 

 

おるたな

おるたな