高知の片隅でひっそりとJ-POPを語る

高知から音楽(J-POPメイン) やアニメなど、好きなものへの愛を語っていきます。

Mr.Children「SENSE」-闇から光を目指す-

・全体的な感想

発売直前まで詳細を明かさず、シングルも無しというミスチルにとっては異例となるリリースの仕方だった今作。
そんな不安を吹き飛ばしてくれる傑作に仕上がっていました。

まず、収録されている楽曲が非常に活き活きしているんです。
あえてシングルリリースをしないことで、彼ら自身の楽曲制作に対する意識が引き締められたのでしょう。
そんな心構えを持って制作された楽曲たちは、若さも感じられるくらいに素晴らしい。
壮大なバラードの「365日」からダークさも感じられるロックナンバー「I」(『もういいでしょう!? これで終わりにしよう』って歌詞が心に潜む闇を表現できている)、さらに電子ロックの要素も持ち合わせた「ロックンロールは生きている」など…
多岐にわたっているのも印象的。
今までと違い、生まれ変わったかのようにも感じられました。

これまでのアルバムで吸収してきた要素を上手く昇華しているのも見事。
ベテランバンドとしての本気を見せています。
曲の一つ一つがしっかりと作り込まれていて、聞き疲れすることがないんですね。
バラードナンバーでもそれなりに聞かせてくれるのがすごい。
初期の雰囲気には及ばないですが、若さも感じられるようになっているのがいいね。
まさに、集大成とも言える出来。

曲順についても、闇から光へと向かっていくかのような構成でコンセプトがしっかりしている印象。
1曲目の「I」で内面のダークさを描き、「fanfare」から祝福されたかのように心を開放していく・・・
それ以上に、ある種のドラマ性を感じられるのが素晴らしい。
そこに希望があれば進んでいく、いかにも彼ららしい曲順だと思います。
ジャケットのクジラがジャンプしているように、彼らも暗闇から希望へと向かっているのでしょう。
実にキャッチーであり、前向きなアルバム。

コバタケのアレンジに関しては、少々過剰な気もしますね。
「365日」はアコギを入れるなど、サウンドに幅を持たせられたのかも。

・特に気に入った曲についてレビュー

1.I
ダークさとミステリアスな雰囲気を併せ持ったメロディが印象的なロックナンバー。
イントロの雰囲気が素晴らしいのはもちろん、サビのギターサウンドが痛快。
最近のミスチルにしてはギターを聞かせてくれたので、これだけも聞き応えありの1曲。
歌詞も「もういいでしょう!? これで終わりにしよう」というフレーズで心に潜む闇を大胆に描いているのが見事。

2.擬態
ピアノとアコギを中心とした突き抜けた感じが爽快なポップナンバー。
イントロから駆け出していくようなドラムのリズム、サビの軽快さが心地いい。
ひねくれた歌詞にも注目してほしい1曲。

7.ロザリータ
耽美な雰囲気の漂うメロディがいいんですよね。
ピアノやストリングスの派手なアレンジがこの曲ではプラスに働いている印象。
歌詞はディープな恋愛模様を描いたものになっていて、大人のムード満点になっているのが印象的。
ここまで深く描いた歌詞なんて、そうそうないような気がします。

9.fanfare
ミスチルの曲で久々にアグレッシブなナンバーを聞けた気がします。
それでいて、サビはポップなのがいい。個人的にはギターリフとベースライン、曲の構成がいい感じ。
間奏の展開は曲名の通り、ファンファーレを告げてくれるかのよう。

歌詞も非常に前向き。
『悔やんだって後の祭り もう昨日に手を振ろう さぁ 旅立ちの時は今 重たく沈んだ碇を上げ』
「後ろを向いていても意味がない、ひたすら前に突き進むことで活路が見いだせる」って決意が感じられました。
新たな次元に突入した今のミスチルが感じている心境にも思えるのが素晴らしい。

・まとめ

これまでの要素を踏まえて制作された本作ですが…
決してここが到達点ではないと思うんですよね。ミスチルというバンドは現状に留まらず、常に先を見据えている。
だからこそ、「SENSE」という傑作を作り上げたんだと思います。
新たな次元に突入したと思われるミスチル、今後がある意味で楽しみです。